2007/08/15

身を削って豊かになった──家島諸島

2007.08.12
【兵庫県】

 家島(Map)


 以前訪れた淡路島から見えた島影に「あんなところにも島があるんだ」と、その存在を知りました。
 姫路港から高速船で30分程度の場所に家島諸島はあります。
 その中心となるのが家島で、瀬戸の小島は平地は限られているのですが、その狭い場所に5階建て程度の小ぎれいなビルが多く建っているのに驚きました。
 裕福な島なんだろうなあというのが第一印象です。
 大きな入り江が天然の船だまりとなっていて、大きな砂利運搬船が数多く係留されており、造船所もあります。その入り江の奧には網を引く、瀬戸内にしては大きめの漁船が係留されています。
 砂利運搬船は、今回行けなかった西島と男鹿(たんが)島から採石した砂利を、主に関西国際空港の埋め立てのために運んでいたそうです。
 ではその砂利は島のどこから持ってきたのかといえば山を削って運び出したわけで、そのありさまは異様としか言いようがありません。


 上は先日行った赤穂御崎(あこうみさき)からの撮った西島の写真です。
 行ってみて面白いことに気付きました。島への船が着く港付近からは、そんな採石場の山肌が見えないように気をつかっているようなのです。
 島外からのこのアングルはもちろん対象外のようですし、どう繕おうが姫路の港からもその異様な姿を見て取れる男鹿島ですらも、船着き場付近の海水浴場からは、その姿が見えないように山を削っているのです。
 それを、頭隠して尻隠さずと受け取るのか、来島客への配慮と取るのかは、訪れた人が感じればいいと言われればそれまでなのですが……

 島を売ってしまった島の民は、魂を売ってしまったとも言えるのではないか、とすら思えました。
 山が無くなるまで削り続けて、無くなったらその先はどうするのだろうか?
 そこを造成して、別荘でも建てて売りに出そうとでも考えているのだろうか?
 そこまでやり遂げたら、逆にあっぱれと言えるかも知れません。

 漁業も盛んなようで、エビ(干した大きさが親指と人差し指で輪を作ったくらいで、皮をむいて食べていました)やジャコ(チリメン)の網や、ヒラメ、タイの養殖や、海苔に釣り堀までやっており、何もかもうまくいっている島という印象があります。
 きっと昔から漁業で豊かだったと思われるのですが、そんな豊かさから「山を削って金にしよう」などという都会的な発想が生まれたのではないかと思われます。
 その日は姫路に泊まり、寿司屋のオヤジからそんな背景談を聞かせてもらいました。
 私「お盆のせいかも知れないが、子どもが多かった気がする」
 おやじ「いや、普段から多いんだよ。あの島には、若いのがみんな帰っていくんだよ。高校からはこっちに来るんだが、金持ちは姫路に家を持ってて、こっちの家から通うのがいるらしい。昔は水が不便で、水よりビールの方が安かったらしいし、風呂も大変だったらしいが、水を引いてからは不自由が無くなったみたいだな」。

 なるほど、キレイな家が多かったし、高速船も新造船で豪華だし、埋め立て地に立派な公共施設も建っている。まあ、道路が狭いのは仕方ないところか?
 島の活性化を実現しているのに、何か文句あるの?
 そんな潔さと言うか、大胆さに舌を巻く思いがしたのですが、これまでも「島の活性化実現に知恵を絞ろうよ!」と思ってきたわたしも、代替の提案が出来ないのであれば文句を言う資格はないと、詰め寄られた思いがしました。
 豊かにならなければ活性化しないし、若者は戻らない。では、豊かになるためにどうしたらいいのか?
 今の日本は「それは違うだろう」などと言うことなど出来ない状況になりつつある、とも思えます。


 話変わって、鯛は何して食べても(刺身、焼き物、煮物、出汁を取っても)旨いよなあ!
 瀬戸内はやはり鯛でしょう! 瀬戸内へ行くようになってから、鯛が大好きになりました。
 おやじ「この辺りは流れも速いし、潮が濃いといいますね。いい漁場なんですよ」
 そういう自慢ってうらやましい限りですが、それだけを頼りに生きていくことはこれから難しいのでしょうか?


2007.08.13

 坊勢(ぼうぜ)島(Map)


 ここも豊かな島です。
 その証しとして、島中どこでもミニバイクの往来が途切れないことに驚きました。
 普通の小島では、人の往来すら滅多になくたまにすれ違うのはお年寄りばかりなのに、この島では老若男女がバイクで「ブンブン」走り回っています。
 ──まあ、その乗り方がスゴイのよ! このブログはマイナーだから大丈夫だと思うけど(珍しいからと書いてしまってひんしゅくを買うことが、ままあるそうです)、ミニバイクに3人4人乗りは当たり前で走っています。道も狭いし、スピードも出ないし、島での現実に即しているとは思えますが、気をつけてね!
 そんな活気が「生きている島」の証しなのだと思いました。
 食事するところもカラオケ店もあるしね。埋め立て地に整備されたグラウンドで中学の野球部が練習しているし、中学の校庭では女子が何十人もテニスの練習をやっているし、小島の風景じゃないとすら思いました。
 ただ、子どもたちも島の子どもらしさと思える素朴さに欠けていたことは、ちょっと残念な印象があります。
 小島とはいえ、裕福な場所では素朴さとは失われてしまうのかと、これは新たなテーマとして頭の片隅に残りそうです。


 上は漁船の舳先(へさき)に映る海面で反射した太陽光。
 下は、この辺りの漁船の舳先に付けられた家紋等をあしらった装飾です。
 スゴイものはキンキラキンだったりして、いわゆるトラックの飾りのようなもの、なんて言ったら怒られるか……




 姫路城(Map)


 熱中症になりそうだったので、男鹿(たんが)島をやめて姫路に戻りました。家に帰っても、体が火照っていてバテていたようなので、やめて正解だったと思っています。
 でも、こっちの方ががぜん暑いんじゃないの?(日陰や、喫茶店がある分助かりましたが)と、帰って調べたら、家島の最高気温29度、姫路33度でした。やはり4度の違いは大きいですよ。島では風が結構あって、楽でしたもの(瀬戸内の夏、少しはイメージ改善されました)。
 このお城は、大部分が昔のままに残されていることから人気が高いこと、良く理解できました。しかし、お城を丸々保存するってことは相当な財政力が必要であるだろうと、昔の藩主や姫路市に対して変な(?)感心をしてしまいました。まあ、国宝ですから国のお金も出ていると思われますが、最もサイズの大きな国宝なのではないでしょうか。

 昨晩泊まったホテルに外国人観光客が大勢いて驚きました、世界遺産恐るべし! 海外の観光客を呼ぶには、世界遺産のお墨付きが威力を発揮するんですね。
 逆にこれからは、世界遺産のお墨付きがないところには海外からの人は来てくれないということにもなるわけで、観光都市って大変ですね。(ホテルの朝食で、ココアは無いのか? と聞いてる外人いましたから、ホテルのサービスもグローバルを目指さないといけませんしね……)


 上の場所は、近くで説明していた人が盛んに「遠山の金さんの撮影に使われた場所なんです」と語っていました。
 なるほど時代劇に出てきそうな光景です。

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